オイラの大学卒業論文!「中国ソフトウェア市場の海賊問題」

ヴィクティム・サンクチュアリ!

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ようやく終りを迎えてきました、大学生活の四年間!やあ〜一年間日本での生活の中の、沢山の些細なことから感じてきました、中国の海賊問題の厳重さを!ですから、卒業の今、卒業論文をきっかけに、この海賊問題について書いてみました。






中国ソフトウェア市場の「海賊」問題
中国軟件市場的“盗版”問題
(まあ〜アウトラインと脚注などは省略しますwww)
要旨
経済の発展につれて、コンピューター技術が進んでいる中国は、インターネットやマルチメディアデバイスを利用する人数が世界一である。一般的に考えて、このような国は世界最大のソフトウェア市場になるべきだが、実際は正反対で、現在の中国には、「海賊版」という大きな問題が存在している。
海賊版問題の根源は国民消費能力と著作権に関する法律の二つの方面に考えられる。そして問題の解決には政府、ソフトウェア開発者、経営者と利用者の努力がなければならないと考える。
本文は、その問題の現状を通じて、その原因を分析する。そして、問題解決への対策をも探してみる。

キーワード:ソフトウェア;市場;海賊版著作権

謝辞
まず、本論文を書き上げるために、ご指導、ご協力を頂きました周茜先生と菅井将貴さん、また、四年間日本語を教えて頂きました李玉秋先生、任克先生、張玉琴先生、野村由香里先生、岩城充先生、奥田真紀子先生、山岡洋輔先生、小林香織先生、太田伸一郎先生、そして姫路獨協大学の先生の方々にこの場をお借りして篤く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。


はじめに
 経済の発展につれて、コンピューター技術が進んでいる中国、人口が多い、インターネットやマルチメディアディバイスを利用する人数が世界一であるが、その発展の流れとは全然合わない現象が発生している。それがソフトウェア市場の「海賊版」問題である。本文はその問題の現状を通じて原因を分析し、問題の解決方法をも探してみたい。

第一章 中国にある海賊版ソフトウェアの現状
(一) 無料でダウンロードして利用するのが「常識」
 海賊版というのは、著作権者の許可を受けないで複製・販売される書籍・テープ・ソフトウエアなどのことである(注:『三省堂 大辞林』より)。法律的に言うと、法律上の権利を無視して諸権利を有しない者により権利者に無断で発売される非合法商品である(注:ウィキペディアより)。
 中国では、海賊版ソフトウェアをダウンロードできるインターネットサイトが多くあり、一般使用者は、インターネットに接続し、ソフトウェアを無料でダウンロードして、利用する事ができる。近年、インターネットの急速な普及に伴ない、こういう状況もさらに悪化している。
 例えば、「ブルーレイディスクはまだコピーできないのか、できればプレイステーション3を買うのに…」、「昨日、新作キングダム・ハーツソニーPSP用ゲームソフト)が出たよ、早速ダウンロードしようぜ!」、「○○くん、そのオフィス2007はどっかでダウンロードした?それじゃあ、俺のパソコンにもインストールしてくれないか。」などの風景は珍しくない。中国人にとって、海賊版ソフトウェアを無料でダウンロードして利用することはすでに「常識」になっているのである。
(二) 経営者側も改造品若しくは海賊版を勧めている
 ユーザー側は無料でダウンロードすることを常識とするので、経営者側も改造品若しくは海賊版を勧めている。多くのコンピュター専門店やゲームショップでは正規品のソフトウェアを取り扱っておらず、客の要求に応じて、その場でダウンロードして提供するか、商品の本体を海賊版が利用出来るように改造する。また、コンピューター専門店で販売するPCに、海賊版Windowsシステムをインストールして出品するのも商習慣になっている。
町中を巡ってみると、小さなソフトストアはよく見られる。このようなソフトストアで取り扱われている商品をよく見ると、明らかに正規品のソフトとは違うことに気付く。包装は簡単で、ソフト本体は安物のCD-ROMやDVD-ROMで作られたように見える。このようなソフトウェアにはOS(オペレーティングシステム)からゲームまで、旧作から最新作までもある。価格を訊ねてみると、内容を問わず、CD-ROMは1枚で3元(日本円約40円位)、DVD-ROMは1枚で5元(日本円約70円位)という低価で、店主によると、このような海賊版のソフトウェアは、正規品ソフトウェアよりよく売れるそうである。
(三) 国内の多くのソフトウェア開発会社が倒産
 正規品の価格より格安の海賊版ソフトが市場に氾濫しているため、正規品ソフトウェアが売れなくなる。その為、倒産したソフトウェア開発会社も存在する。例えば、深圳市深軟電子実業有限公司、北京新天地互動多媒体(Suntendy Game)技術有限公司武漢奥美電子(Aomei Soft)有限公司などの会社は、2000年初頭頃には有名であったが、海賊版問題により経営を続けることができなくなり、倒産した。

第二章 「海賊」問題の原因
(一) 国民消費能力の低下
中国は現在、開発途上国であり、経済はまだアメリカや日本などの経済大国には及ばない。
国民の平均収入は低いが、ソフトウェア開発の販売価格が高いため、その差は両極端のように開いているという現象が起こっている。
月刊誌『プレジデント』2007年12月号による、中国・北京の平均実質月収は30000円(当時約1920人民元)、日本・東京は240000円(当時約15360人民元)、アメリカ・ニューヨークは280000円(当時約17920人民元)である。
これに対し、マイクロソフト社のオフィス2007通常版を例にあげると、このソフトが中国で発売されている価格は3920人民元、日本では51559円(2007年当時約3300人民元)、そしてアメリカでは559.90米ドル(2007年当時約4100人民元)である。これらを三ヶ国の平均実質月収と比べてみると、正規版のオフィス2007を購入する場合、アメリカ人は月収の22.88%、日本人は月収の21.48%を使えば可能であるが、中国人の場合は二ヶ月分の月収を足しても購入することが出来ない計算になる。
(二) 著作権に関する法律は不完全
知識産権とは人類の創造的労働の成果であり、主に専利権、商標権と著作権の三つに分けられる。『中華人民共和国刑法』の第二編細則第三章には、「知識産権侵害罪」がある。その中で、著作権侵害に対応しているのは第217条と第218条の「著作権侵害罪」と「侵権複製品販売罪」である。
『刑法』第217条によると、著作権侵害罪と裁定されるには三つの条件がある、それは「金利目的であること」、「他人の著作権を侵害すること」と「違法所得金額が大きい」である。三つ目の条件は有罪と無罪の重要な裁定基準になっている。つまり、若し、他人の著作権を侵害したが、違法所得金額が「大きい」と認定されない場合、著作権侵害罪とは裁定されず、普通の民事侵権行為として処罰される。これに対し、中華人民共和国最高裁判所は『非法出版物に関する刑事事件の審理の具体的な法律応用の若干問題の解釈』にて、以下の通り、認定基準を明確に定めている:金利を目的に、『中華人民共和国刑法』第217条に述べた行為の一つを実施し、個人違法所得金額が五万人民元以上、団体違法所得金額が二十万人民元以上の場合、「違法所得金額が大きい」と認定;個人違法金額が二十万人民元以上、団体違法所得金額が百万人民元以上の場合、「違法所得金額が巨大」と認定される。
著作権侵害罪は法律上でこう定義されているが、これに対して、海賊版の製造者は様々な対策を考えている。
金利目的」の認定基準に対して、海賊製品の上に「このソフトはブロードバンドのスピードテスト、翻訳者の交流、またはプログラミングの練習に利用してください。ダウンロードしたら24時間以内に削除し、お気に入れば正規版を買いましょう!」という「注意書き」を記載し、「金利のためではない」と主張している。
また、「他人の著作権を侵害した」の認定基準に対して、製品のインストール画面に「この作品の著作権など一切の権利はこの作品の元作者様にあり、当制作組は一切の責任を取りません」という「注意書き」を表示する。そしてダウンロードサイトにも「この作品の元作者様の著作権を尊重し、無断転載等はご遠慮ください」と書いている。
有罪か無罪の重要な認定基準である「違法所得金額」に対し、海賊版製造者や販売者は次のような対策を立てている。
一、インターネットダウンロードサイトの場合。
運営者は、ウェブサイトで、海賊版ソフトウェアを無料で提供すると共に、ウェブサイト上に沢山のADバナー(バナー広告)を置く。これは、利用者がADバナーのあるページを開くことで自動でカウントされる。サイト運営者はカウンターの数によって、ADバナーの持ち主から、一定金額の報酬金をもらえる。ダウンロード自体が無料なので、「違法所得金額」は発生しないが、国内のインターネット利用人口が多いため、カウンター数も大きい。このようにして、サイト運営者は「海賊版による違法収入」を「広告による収入」へと合法化することで、「安全」にお金を儲けることができる。
二、海賊版ソフトウェア本体を販売する場合。
海賊版ソフトウェアを販売することで「違法所得金額」が発生するが、「『大きい』のでないのなら大丈夫」という考え方がある。その為、現在中国で海賊版ソフトウェアを販売する店のほとんどが小さな店である。また、認定基準は五万人民元以上であるが、海賊版のソフトウェアは一枚3元か5元の低価である為、五万元になるにはかなりの枚数が必要であるし、普通の海賊版ソフトウェア販売店では在庫は数千枚程度であるとともに、売り上げの記録もしないので、違法所得の証拠は残らない。若し事情がバレたとしても、違法所得金額が大きくないため、民事侵権行為で裁定され、一定金額の罰金を払えば済んでしまう。
ゆえに、法律の目的も果たされず、著作権を侵害する者も裁きを受けられないという現実になっているのだ。

第三章 「海賊」問題の対策の探求
(一)政府側:法律を完善すべきこと
海賊版ソフトウェアが横行するのは、著作権に関する法律に大きな欠陥が存在しているからである。この現象に対して、政府は著作権に関する法律を完善するのが最優先であると考える。
まずは、著作権侵害者が海賊版ソフトウェアを制作することの目的は直接的に「金利」を求めるではなく、ADバナーなどで間接的に報酬金をもらい、その「海賊版での収入」を「広告での収入」に合法化し、法律的な追究から逃れている。
そして、著作権を侵害したかどうかは、制作者が掲げる単なる「注意書き」で判断できるものではないと考える、政府はもっと厳しく審査を行わねばならない。作品の出所や内容、そして販売ルートなど、すべて厳しく審査を行い、断固として不法な制作者を取り締まるべきである。
また、有罪と無罪の裁定時に、違法所得金額を重要な判定基準にしてはいけないと考える。ソフトウェアを複製転載、ハードウェアの改造などの行為自体が著作権を侵害しており、それらは所得金額とは関係ない。よって重要な判定基準は「著作権を侵害したか」にせねばならないと考える。
また、著作権侵害は単なる制作者の問題だけではなく、利用者にも責任があると考える。海賊版と知りながら、それをダウンロード・購入・利用することも著作権への侵害行為である。『刑法』では制作者と販売者に対する処罰は定めているが、利用者に対するものは無い。このままでは今後も、利用者は堂々と海賊版ソフトウェアを使用し続けていくだろう。
外国の著作権に関する法律をも参考にしてみようと思う。
日本の『著作権法』第四十八号第七章には著作権侵害罪の裁定基準が以下のように定められている。
著作者人格権著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為によって作成された物を、情を知って、頒布し、頒布の目的をもって所持し、若しくは頒布する旨の申出をし、又は業として輸出し、若しくは業としての輸出の目的をもって所持する行為。そして、プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によって作成された複製物を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知っていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。」 つまり、日本国憲法では制作者、提供者、販売者、利用者全員が著作権侵害罪の対象となっていることがわかる。
また、アメリカの著作権法にも裁定基準をこう明確に定めている。
著作権を故意に侵害した時、以下の条件のいずれかを満たした場合、刑事侵権犯罪とみなす:①商業利益或いは個人利益を目的にする;②180日の間に、他人の著作権を侵害した製品を1点以上、複製、配布及び電子手段で転送した、その製品の元々の価値の合計が1000米ドルを超えている;③他人の著作権を侵害した製品を、インターネットで公衆に公開または配布する。」
(二)開発者側:開発戦略を慎重に検討すべきこと
ソフトウェア開発会社は、大きな資金を使ってソフトウェアを開発し、市場に出すが、大部分の中国人ユーザーにとり、その設定価格は消費能力を超えた高額のため、手が出せない。そして、発売直後に現れる海賊版ソフトウェアは、品質も同格で、庶民のニーズに合った低価格であるため、結果、正規版の市場を奪ってしまう。この問題に対し、開発者側も慎重な対策を検討すべきではないかと思う。
私の考える対策の一つのは、一般大衆の消費能力に応じて、販売価格を調整することである。その先例として、北京市正普科技(Zipdisk)発展有限公司がある。この会社は、正規品ソフトウェアの廉価版を生産、発売しており、「芝麻開門」シリーズや「阿拉神灯」シリーズなどの廉価正規版は海賊版より、良い品質と普通の正規版より安い価格であるため、人気を集めている。
また、もう一つの対策として、アフターサービスを強化することをあげたい。海賊版は安いが、アフターサービスの提供がない。このアフターサービスを強化し、正規品を購入したユーザーに「値打ちがある」と思われること、そして、ユーザーの意見を聞き、より良いサービスを提供し続けることで、ユーザーとの間のコミュニケーションも無形の宣伝となれるのだ。この先例として、北京金山軟件(Kingsoft)有限公司がある。この会社のソフトウェア製品はすべて、公式サイトからダウンロードすることができ、ユーザーはダウンロードしてから1ヶ月の無料試用期間を得られる。そして、購入するかどうかは試用してから決めることができ、購入した場合、会社は不定期のアップデートサービスを提供し続けるため、ユーザーから好評を得ている。現在、この会社は日本、マレーシア、オーストラリア、インドまでエリアを拡大し、国際的大企業となっている。
(三)経営者側:経営手段を規制すべきこと
ウェブサイトまたはソフトストア経営者が国内最大の海賊版ソフトウェア提供者だとも言えるだろう。海賊版ソフトウェアの制作者と利用者のあいだで重要な「橋」の役を果たすだけでなく、海賊版ソフトウェアを制作者から利用者へと流通の主要なルートにもなっている。
私は、海賊版問題を解決するには、経営者の経営手段を自己規制することが不可欠であると考える。経営者が自己規制し、その橋役を果たさなければ、海賊版制作者の違法収入は無くなり、海賊製品を制作する動力も無くなっていくのではないかと考える。
現段階で、中国の著作権に関する法律は不完全であるため、経営者の自己規制が最も効果的だと考える。そのため、私は、経営者に自己規制をしてもらいたいと考える。
(四)ユーザー側:海賊版の利害関係を反省すべきこと
海賊版を購入して利用することは、個人にとっては小さな利益だが、ソフトウェア開発会社にとっては大きな損害である。このまま、ユーザーの誰もが海賊版を利用し続ければ、国内の開発会社は倒産し、その結果、いずれ外国のソフトウェア会社は中国での投資を遠慮するようになり、ついには、中国のソフトウェア市場は崩壊してしまうだろうと考える。
そのため、今、海賊版利用者は、この危機を知り、反省、自粛し、今後一切海賊版ソフトウェアを利用しないようにしてほしいと考える。


おわりに
中国は今、高度経済成長期にあたり、海賊版問題は、例えるなら、「楽章の中の不協和音」のような存在であり、中国経済の正常な発展を妨害していると考える。この問題の解決には政府、企業、ユーザーが現在の状況とやり方を考え直し、三者一体となっての共同努力が必要であると考える。政府は法律を完善し、企業は経営戦略の改正とともに経営手段の自己規制をし、ユーザーは利害関係を熟考する。中国のソフトウェア市場の生存のために、「海賊版」撲滅に皆で力を尽くそうではないか。

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